樹脂粉体の加工について
粉体塗料とは、顔料・硬化剤・添加剤・樹脂・フィラーなどを粉末状にした塗料を、金属などの表面に吹き付けてコーティングする技術です。本記事では、その中から樹脂粉体を用いた加工に焦点を当て、特徴や加工プロセス、メリット・デメリットについて解説します。
樹脂粉体の加工の特徴は?
一般的に使用されているのがシンナーなどで希釈した塗料です。粉体塗料は粉末状態で使用しています。
有機溶剤を使用しないため、VOC(揮発性有機化合物)が排出されません。大気汚染や水質汚濁を抑制できる環境に優しい塗料です。
塗装時に付着しなかった塗料を回収して再利用できるため、材料のロスが少なくてすみます。膜厚が厚いため耐久性と防錆性に優れており、塗り直す必要がほとんどなく経済的です。
静電気を使って塗料を付着させるため、飛散が少なく、体への悪影響の心配もほとんどありません。
物理性能、耐食性、耐薬品性に優れた強靭な塗膜で形成されており、高品質な塗料である点も特徴のひとつです。
プロセスは?
粉体の特性には、粒子径や粒度分布、形状、比重、表面性(表面積・多孔質性・凹凸等)、樹脂被覆があります。
これらの特性を制御するために、以下のような技術を用います。
- 造粒技術:噴霧乾燥方式(湿式)、圧縮成形方式(乾式)、転動造粒方式(乾式)等を用いて、さまざまな形状、粒子径を持つ粒子を作製。
- 分級/粒度調整技術:篩式、気流分級式等、複数の手法を組み合わせて粒度分布の調整。
- 焼結/熱処理技術:静置式加熱、流動式加熱等を用いて、粒子表面の性状や内部構造を制御。
- 樹脂被覆技術:各種の有機樹脂を粒子表面に被覆し、流動性や電気特性等の機能を持たせる。
- 微粉砕:常温で樹脂の機械粉砕を行い、300~2,000μm程度の粒度に調整。
- 混合・混錬:異素材を混ぜ合わせたり、練り合わせたりする。
参照元:粉体加工技術(https://www.powdertech.co.jp/technology/process/)
樹脂粉体の加工のメリット・デメリット
樹脂塗料と粉体塗装を組み合わせた樹脂粉体は、目的や用途に合わせてさまざまな塗装製品に使用されています。
粉体塗装の方法は、主に静電粉体塗装法や流動浸漬法、静電流動浸漬法があり、一般的な粉体塗装は静電粉体塗装です。静電粉体塗装は、マイナスに帯電させた粉体塗料を噴射し、静電気で対象物に付着させる加工法です。
次に、樹脂粉体の加工のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット
樹脂粉体は利用効率が高い塗装方法です。未付着の塗料も回収・再利用できるため廃棄物が少ないのがメリットです。
一般的な液体塗装は、塗装ムラや液ダレが発生しやすく技術や経験を必要としますが、粉体塗装は自動化が容易であるため安定した品質を保てます。
耐久性が高く錆に強いため、塗り直す回数を減らすことができ、コストパフォーマンスも高くなります。
一般的な塗料は樹脂を溶かす際、VOC(発揮性有機化合物)が発生するため、空気中に放出されると光化学スモッグの原因になります。一方、粉体塗装は有機溶剤を含まないため、VOC(揮発性有機化合物)が発生しません。人にも環境にも優しい工法です。
デメリット
粉体塗装に使用する塗料は粉末のため、複数の色を混ぜて新しい色を作ることはできません。これは、塗料が均一に混ざりにくく、色ムラが生じやすいためです。
また、膜厚の制御が難しく、特に薄膜での仕上げには不向きです。そのため、微細な部品や精密機器には適用が制限される場合があります。こうしたケースでは、他の塗装方法の検討が必要です。
粉体塗装には専用の設備が必要となり、液体塗装と比べて初期導入コストが高くなる点もデメリットです。
さらに、前処理が不十分な場合や、素材との相性、焼き付け条件が適切でない場合には、塗装の剥がれや錆の発生といったトラブルにつながる可能性があります。
まとめ
樹脂粉体塗装は、有機溶剤を使用しないため環境への負荷が少なく、静電気を利用して塗料を付着させることで塗料の飛散を抑え、人体への悪影響も軽減できるのが特長です。また、未使用の塗料は回収・再利用が可能なため、コスト面でも優れています。
一方で、粉体塗装には専用の設備が必要となるほか、粉末状の塗料のため色の混色ができないなどのデメリットもあります。さらに、前処理が不十分であったり、素材との相性や焼き付け条件が適さなかったりする場合には、塗装の剥がれや錆の発生といったトラブルが生じる可能性もあります。
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